荏田南文化サロン part Ⅵ

◆講演会◆
「港北ニュータウンの歴史を知う」
おはなし:川手昭二さん(筑波大学名誉教授)

日時:2018年6月2日(土)13:30~15:00
会場:荏田南幼稚園2階ホール

報告 江幡千代子

 「まるで竹林の7賢人(中国の故事)のような方との出会いでした。」

 川手さんはそう話を始められました。住宅公団の港北ニュータウン事務所の初代所長 に就かれて、計画を理解してもらうために地権者の方たちとの交流を深めていくお話です。

 日本の高度経済成長にあわせて都市部に大規模な団地やニュータウンを急ピッチで造成していった時代。横浜市の飛鳥田市長が1965年に「横浜市六大事業」を発表し、田村明氏を中心に開発の3つの理念(乱開発の防止、住民参加、都市農業の確立)が作られ、港北ニュータウンの大プロジェクトが始まりました。

多摩ニュータウンのように、土地を一括買いあげて造成するまちづくりではなく、地権者から一旦土地を借り上げて造成後、公共のための土地を減歩して地権者に返すという独自の方法を取り入れたのがこのニュータウンの特徴ですが、公団と市と地権者の信頼関係なしにはすすめられない難しい方法です。

川手さんは、所長就任当時、まず地権者の農業に取り組む生き方への共感、尊敬の思いを持たれて「7賢人」の表現になりますが、その賢人と新しい街づくりを一緒に勉強しながら夢を描くような関係を築かれました。

 いま私たちのこのまちは、俯瞰してみると私たちが幸せな暮らしを送るための装置がたくさんあることに気が付きます。公園や学校、集合住宅などを結ぶ「歩行者専用道路」、買い物の奥さん達の「立ち話の場所」、無用な車が入らない「コミュニティ道路」。地下鉄と全長13の緑道を結び付ける「幅広歩専道、近隣住区」等々。

 荏田南小学校・中学校地域は、1983年に港北ニュータウンで入居が始まった最初のエリアで、今年で35年目になります。都筑区が誕生する前は学校の体育館が唯一の文化施設として、子どもたちのために「まちの音楽会」やプロの演劇等を鑑賞する活動がありました。主催する「まちの教室」というグループに、公団や市の職員も一緒に参加して色々なすばらしいアイディアを与えてくれました。ハードが整備されてもそこに住む人たちが、あたたかな交流を生み出すまちになってこそ、本当にニュータウンだと、見守った人たちです。

 よいまちに育っているでしょうか?川手さんは、竹林の賢人と約束したまちづくりを私たちにも問い続けられていると思いました。

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facebook上での投稿をピックアップします。

 今日住宅公団の画一的というレッテルを剥がします。利害対立関係にありながら次の次の世代を考え知恵者同士が新しい街を築いていくお話。現場で仕事した人にしかできない最上のお話。今のうちにお聴きできてよかった!映画「人生フルーツ」に通じますね。

魅力的な川手先生ですね。結局人間同士のぶつかり合いから新しい世界が広がる。避けてはいけない。

初めて伺った話が沢山ありました。企画していただき、また見事な司会でありがとうございました。ますます港北ニュータウンの魅力が膨らみました。「4っつのビジョン」について記録を残していただけると嬉しいです。

川手先生、お名前から昭和2年生まれとのこと、何時までもお元気でまたいろいろ教えてください。

今までは、金子保氏中心で進んでいたと思っていおました。荏田南5丁目の青木公雄さんが、先生から賢者と言われていろいろ納得できました。この地域が真っ先に開発に着手できたことも理解できます。そして新住民として入居した私たちを運動公園用地の残し方など、住民に適格にアドバイスいただいたこと、どんど焼きなど教えていただいたこと、群れることを嫌い地に足の着いた生活をされていたことなど思い出します。これからも青木公雄氏のことを語り継いで行きたいと思っています。

個人的にはお話を伺ったことがあるのですが、知らなくてはならないことばかりでした

今日、講演会を聞きました。川手先生からは貴重なお話を伺い、帰りに青木公雄さんグループの「新しい隣保区」周辺を散歩しました。

「仕事は最後まで見届けなくては」とおっしゃっていたのが心に残っています。バスのこと。

川手先生が港北ニュータウン計画を推進するに当たって、地元でリーダー的な存在であった4人のうちのお一人の青木公雄氏の集落の換地先は、おっしゃるように折田公園バス停と荏田南近隣センターの所で、農地が一緒に整備されていました。

都市開発の4つのビジョンのお話を伺うのは初めてでした。「青木公雄氏」「農協」「田村明氏(丹下健三氏)」「鳩山一郎氏(住宅公団)」の4つを詳しく説明して下さったのが勉強になりました。

初めて伺ったので理解が充分ではありません。「田村明氏のビジョン」は「土地の公有化」につながるもので多摩ニュータウンの開発の理念として動き出したそうです。また「農協のビジョン」は、「農家それぞれではなく、『農協』が共同組合的に最終消費者に届ける、つまり『農協は公団』」という考えだとのことです。主催者の方で講演録をまとめてくれると嬉しいです。(配布資料には「4つのビジョン」のくだりははっきりとは出ていませんでした。) 

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